意地悪な彼が指輪をくれる理由
倉田真奈美、28歳、ジュエリー販売員(アルバイト)。
今日から職場に復活!
「10日間、本当にご迷惑おかけしました」
ももこは私のお腹の辺りを見つめて言った。
「黒いのなくなってますね。あれ、きっと盲腸の色だったんだ」
「そうみたい。次見えたら早めに言って。すぐに病院行くから」
もう絶対に無理はしない。
嫌いだけど辛いときは病院へ行く。
そう決めた。
祐子さんは私の背中をバシバシ叩いた。
「もうすっかり良さそうじゃん。助っ人も来たし、結構楽しかったよ」
「祐子さんにはどうお礼を言っていいやら。命の恩人です」
「大袈裟だよ。それより、今日は真奈美にたくさんお客様が来るからね」
「私に?」
「真奈美から買いたいって言うお客様に、今日復活予定だって伝えてあるから」
「はい!」
あれだけ派手に倒れたから、私の入院は他の店舗のスタッフさんにも知られていた。
「あら、もう平気なの?」
「無理しないでくださいね」
歩けばみんなに声を掛けてもらって、とても嬉しい。
私、幸せ者だな。
みんなが喜んでくれるように頑張ろう。
「いらっしゃいませ。どうぞご覧くださいませ」