意地悪な彼が指輪をくれる理由

私はくしゃくしゃな紙袋のシールを剥ぎ、中を見た。

「これっ……!」

紙袋に押し込まれ、更には尻に敷かれていたもの。

それは私が雑貨屋で見ていた大人っぽいシュシュだった。

しっかりした作りのものだから、開封すると、きちんと形を取り戻す。

「持ってると重宝するんだろ?」

「うん、する」

「使っとけ」

「うん……!」

ヤバい。

嬉しすぎる。

「ありがとう。超大事にするよ」

ああもう。

本当に泣けてきた。

「おう。何よりも大事にしろや」

振られたのに、こんな幸せ感じちゃっていいの?

私はシュシュを抱きしめ静かに深呼吸して、涙をグッと堪える。

「その大事なものをケツで踏むのやめてくれる?」

「俺が買ったんだからいいだろ? ポケットに入れてたの忘れてたんだよ」

「屁こいてないでしょうね?」

「わかんねー。したかも」

「うわっ最悪。大事にする気がちょっと薄れた」

「あはははは」

瑛士、超ムカつく。

振ったくせにもっと好きにさせちゃってさ。

すっごく悔しくて辛いのに、全部どうでも良くなるくらい幸せだ。

シュシュひとつで安い女だな、私……。

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