意地悪な彼が指輪をくれる理由

瑛士の住むマンションに到着した。

地下駐車場からは屋内であるため、雨風を気にせずに荷物を部屋へ運ぶことができる。

あとはこれをパーティ仕様にラッピングすれば完了だ。

久々に入った瑛士の部屋。

最後に来たのは7月、確か碧のプロポーズの後だったっけ。

緑のカバーがかけられたソファーに、今日買った品々を陳列し、一つ一つラッピングしていく。

「瑛士、あんた相変わらず不器用だね」

「うるせーな。こういう細かい作業嫌いなんだよ」

買い物をサボった分、ラッピングは私がメインで。

これでおあいこだ。

最後の一つを包み終わった頃には、もう日が暮れる頃。

分厚い雲に覆われている横浜は、不気味な薄闇に包まれている。

「うわー。こりゃ酷いな」

普段とは明らかに違う、重い風の音。

容赦なく窓にぶつかる雨粒の音。

外を見ると、どんよりした空を雲が横に動く。

「真奈美、今日は泊まってけよ」

「え?」

「この天気じゃ帰れないだろ。車はもう危ないし、電車もきっと動いてない」

「そうかもしれないけど……」

私、振られたのに。

できるだけそうならないよう努めていたけど、結構気まずいのに。

泊まるなんて、どうしたらいいの。

「けどじゃない。そうしろって」

気まずさをごまかすため、ついつい攻撃的になってしまう。

「何それ。私に帰って欲しくないって意味?」

「危険を冒してまで帰ってほしくないよ」

「あんたね、私があんたを好きなのわかってるでしょう?」

「そりゃあ、まあ」

「だったら期待させるようなこと言わないで」

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