意地悪な彼が指輪をくれる理由
「お待たせ。記入、ありがとう」
一度ケースに収めた状態の指輪を見せ、ギャランティーカードの説明をして、ロゴ入りの紙袋にそれらを収める。
瑛士はただ真剣に私の話を聞き、
「うん。うん」
と頷いていた。
支払いはカードで一括。
私は最後に、袋の紐のところにピンク色のリボンを結んだ。
私なりの精一杯のサービスだ。
最近ではプロポーズ後にカップルでエンゲージリングを買いに来るパターンが増えている。
断られたり気に入ってもらえなかったりするのを恐れてのことだろう。
だから、プロポーズ前に自分で彼女のために準備する男性はカッコイイ。
指輪のあるプロポーズを夢見ているのは私だけじゃないはずだ。
勇敢な瑛士のプロポーズが、どうか成功しますように。
「はい。プロポーズ、頑張ってね」
紙袋を手渡すとき、一瞬だけ手が触れた。
瑛士の手はしっとりしていて温かかった。
「サンキュ。じゃあ、またな」
「うん。また」
瑛士は嬉しそうな顔をして去っていった。
次に合う時は婚約の報告があるといいな。
私はそれをどうネタにするか、密かにシミュレーションしながら見送った。