意地悪な彼が指輪をくれる理由

いずみは私のベッドにごろんと寝転がり、我が物顔で枕を抱きしめた。

枕にそえる左手の薬指には、マリッジリングとアリュールが重ね付けされている。

窓からの光を跳ね返し、キラキラ幸せをアピールしてくる。

好きな人と一緒になった彼女が心からうらやましい。

「とにかく、そんなに気になるなら連絡してみればいいじゃない」

「口実がない」

「そんなもん適当に作りなさいよ! ここで完全に関係を切らしたら、もう一生会えないかもしれないんだからね。それでいいの?」

「……やだ」

会いたい気持ちと気まずい気持ちが私の頭の中で競り合う。

私が連絡したりしたら迷惑かな。

いやいや、寂しさを埋め合うのがベストだって言い出したのは瑛士なんだから、瑛士に会えなくて寂しい私を満たしなさいよ。

悩んでもキリがない。

振られても諦めきれない往生際の悪い私。

そのくせ怖くて連絡さえできない小心者の私。

ここまで好きになると、自分をコントロールすることさえできなくなる。

「あっ!」

突然いずみがガバッと起き上がった。

「会う口実、思いついちゃった」

「なに?」

「二次会のお疲れさま会」

なるほど、その手があったか!

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