意地悪な彼が指輪をくれる理由
……と、いずみのアドバイスを受けてから一週間。
私は未だに瑛士に連絡できずにいた。
毎日携帯に「大川瑛士」の名前を映し出しては、左下の発信ボタンを押せずにため息をつく。
瑛士からも連絡は来なかった。
そんなある日の夕方、仕事終わりに秋物を物色していた私の携帯が震えた。
もしかして、と素早くバッグを漁り、画面を確認。
“大川秀士”と映し出されている画面。
“大川瑛士”とあまりにも似ていて、一瞬叫びそうになった。
「もしもし。倉田です」
「ああ、俺。秀士だけど」
瑛士じゃなくて、ちょっとホッとした。
自分が勝手に思い詰めているだけなのだが、今日この時点では心の準備ができていなかったから。
「お久しぶりです」
「久しぶり。瑛士とはどう? 仲直りした?」
「……してないです」
「そう。じゃあひとつ提案があるんだけど」
「提案?」
「今日、俺とデートしよう」
秀士先輩と、デート?
中学時代にずっと夢見ていた、秀士先輩とのデート?
「はいっ! 喜んで!」
「喜んでもらえて嬉しいよ。じゃあ8時にみなとみらい集合ね」
「承知しました!」
「いい店取るから、思いっきりオシャレしてきてね」
「もちろんです!」