意地悪な彼が指輪をくれる理由
相鉄線で横浜まで出て、そこからJRに乗り換える。
この乗り換えがなかなか面倒なのだが、瑛士の部屋に行くために近道も覚えた。
ここからみなとみらいまでは、瑛士の部屋とは逆方向だ。
乗り慣れない列車に揺られ、約3分。
待ち合わせ時間の少し前に到着することができた。
指定された改札から出ると、先に到着していた秀士先輩が私に気付き、笑顔で手を振る。
「お待たせしてすみません」
「俺も今着いたとこ。今日は随分色っぽいね」
「先輩がオシャレしてこいって言ったから、張り切ったんですよ」
「ははは、言った甲斐があったよ」
先輩が歩き出し、私もそれについていく。
秋になって夜はめっきり涼しくなった、なんて世間話をしながら入ったのは、横浜でも有数の高級ホテルのレストランだった。
「いらっしゃいませ。ご予約のお名前をお願いします」
「大川です」
「下のお名前もよろしいですか?」
「秀士と申します」
いい店だとは聞いていたけれど、ここまでとは。
慣れない場所にドギマギしてしまう。
「大川秀士様ですね。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
こんなところ、私なんかが入ってもいいの?