意地悪な彼が指輪をくれる理由
やたらふかふかした絨毯を踏みしめホールに入る。
ホテルのエントランスより淡い照明だが、シャンデリアに照らされたインテリアが上品に輝いている。
食事を楽しんでいる客たちは、みんな高貴なオーラが漂っている気がした。
ボーイに案内され、席へ。
「倉田、緊張しすぎ」
秀士先輩は余裕の表情だ。
「だって、こんなちゃんとしたレストラン、久しぶりすぎて。なんだかセレブみたいな人たちがたくさんいるし」
「みんなここに来るためにオシャレしたんだよ。大丈夫。倉田も負けてない」
「こんなスゴいお店でなくても、私全然満足なんですけど」
それこそこの間の焼き鳥屋だってよかったのに。
秀士先輩はにっこりと笑って、シャンパンを持ってきたボーイが去るのを待った。
乾杯をして、シャンパンを一口。
芳醇な香りと空間に、早くも酔ってしまいそうだ。
未だにハラハラ落ち着かない私は、助けを求めるように秀士先輩の顔を見た。
「乾杯も済んだところで、ちょっとだけネタばらししようかな」
「ネタばらし?」
「そう。瑛士についてのネタばらし」
瑛士というキーワードに私はごくりと唾を飲み込む。