意地悪な彼が指輪をくれる理由

「とりあえず、ここを出て瑛士に電話してみます。昔秀士先輩にしてたみたいに、しつこく好き好き言ってやります」

14年もかかったけれど、効果があることは実証できた。

瑛士を諦めることができないのであれば、とことん追いかけてみるしかない。

ハッキリ振られて弱気になっていたけれど、秀士先輩と接しているうちに、彼を好きだった頃のバイタリティを思い出せた。

当時を思い出したのか、秀士先輩は軽く苦笑い。

「彼女とお楽しみ中かもよ?」

「そんなの、邪魔してやりますよ」

瑛士がくれたシュシュで髪をまとめ、服の乱れを直す。

「さっきまでピーピー泣いてたやつのセリフとは思えないね」

「私が泣いたのは先輩のせいであって、瑛士のせいじゃありませんから」

「ああ、だから俺は振られたのか」

私たちは7割のおかしさと3割の気まずさを含めて笑った。

「じゃあ先輩、またいつか」

寝転んだままの秀士先輩は、すっかり「先輩」の顔に戻っている。

「最後にひとつ、聞いてもいい?」

「どうぞ」

「瑛士は君を、どうやって口説いたの?」

私が瑛士を好きになったきっかけを思い出してみる。

再会の日の瑛士。

指輪を買いにきたときの瑛士。

ヤケ酒をしていたときの瑛士。

そして——……

「罠をかけられたんです」

「罠?」

「そう、罠。私単純だから、簡単に引っ掛かっちゃいました」

今思えば、私が瑛士を好きになったのも、きっと彼の術中だった。

中学時代に報われなかった恋への復讐だったのかもしれない。

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