意地悪な彼が指輪をくれる理由
ソファーから立ち上がった瑛士が私を睨んだままこちらに向かってきた。
そんな顔をされると、私も負けじと睨み返してしまう。
もはや条件反射だ。
「俺は答えたぞ。お前も俺の質問に答えろ」
「うるさいなっ! 何だっていいでしょう?」
「よくねーよ」
女医より私を選んでくれて嬉しい。
秀士先輩とのことを気にしてくれて嬉しい。
でも、嬉しいのと同じくらい腹が立つ。
素直になるきっかけをちょうだいよ。
「どうして振られてまであんたなんかに詮索されなきゃいけないわけ?」
「お前が今好きなのは、あいつじゃなくて俺だろうが!」
乱暴な手つきで抱き寄せられ、勢い任せに唇を触れ合わせる。
その瞬間、私の女としての何かが一気に放出されていくのを感じた。
どんなにショックを受けても、どんなに睨みつけても、どんなに悪態づいてもダメだった。
私は今、この男が好きなのだと痛感させられた。
「そうだよ……あんただよ」
骨抜きにされた私の声は弱々しい。
もう睨み返す覇気すらない。
「だったら俺以外の男とホテルなんか入ってんじゃねーよ」
「別にあんたが想像してるようなこと、してないし」
「そういう問題じゃない!」