意地悪な彼が指輪をくれる理由
理不尽な独占欲を、瑛士自身、持て余しているようだった。
「そんなの、やきもちじゃん」
「うるせーな。わかってるよ」
「私が好きなら、そう言えばいいじゃん」
「はぁ? お前なんか好きじゃねーし」
そんな買い言葉にめげるもんか。
好きじゃないなら、どうして一時間以上こんなところにいたの?
どうして秀士先輩に嫉妬するの?
どうしてキスなんかするの?
答えはもう明白なのに、私たちの関係性が邪魔をする。
ムキになった瑛士は私の手を掴み、エレベーターの逆三角ボタンを押した。
ちょうど上からやってきた左の箱へ、捨てるように私だけを押し込む。
「瑛士は乗らないの?」
「乗らない」
扉が閉まりそうになって、慌てて開ボタンを押した。
あの頃と同じ口調、表情、拗ね方、天の邪鬼。
瑛士の「相方スイッチ」も、完全にオンになっている。
相方ナメんな。
何回あんたと夫婦漫才繰り広げたと思ってんだ。
「このまま私を一人で帰したら、もう一生会えないかもしれないよ」
「そうかもな」
「いいの?」
「いいよ」
「バカじゃないの? どうせすぐ後悔するくせに」
「はぁ?」
「あんたなんか、私と会えなくなって、寂しくなって、のたうち回って、毎日私のこと考えながらモヤモヤしてしまえ!」