意地悪な彼が指輪をくれる理由
12月24日。
悲しいかなクリスマスイブ。
私はブラックベースのスーツを着用し、瑛士がくれたシュシュで髪をまとめる。
「あんた、今度こそ決めなさいよ」
面接のためにスーツを買ってくれた母のプレッシャーが、今日も緊張に拍車をかけた。
「……頑張る」
外は快晴。
イブだけれど、雪は期待できそうにない。
瑛士は今日、誰とどうやって過ごすのだろう。
私はまた会いたくなって、寂しくなって、のたうち回りたくなった。
面接の約束をしていた市内の薬局に到着。
「失礼します」
「こんにちは。処方箋ですか?」
受付の綺麗なお姉さんに微笑まれ、もしここで採用されたらこの人と一緒に仕事をするのかと、一瞬妄想が広がる。
「あ、いえ。事務で面接をお願いしておりました、倉田と申します」
「ああ、面接の。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
病院が昼休みの時間だからか、待合室には誰もいなかった。
すぐそこの内科と裏にある皮膚科の処方箋を請け負っているこの薬局は、この時期忙しいに違いない。
お姉さんが扉を開けてくれて、中へ。
「それでは先生を呼んで参りますので、おかけになってお待ちください」
「恐れ入ります」
応接間のソファーに座り、深呼吸をした。