意地悪な彼が指輪をくれる理由
明日のために、もう眠ろうと思っていたのに。
話があるなら電話でも……
「30分で来い」
「は?」
意味が分からない。
「いいから、30分」
「ちょっと、バカじゃないの? 私、もうお風呂に入ったし、これから着替えて化粧とかするんだからね!」
「じゃ、またあとで」
瑛士は私の言い分なんて無視して、一方的に通話を切断してしまった。
なんて自分勝手なの。
横浜市内でも、私の家と横浜駅はそんなに近くない。
かつてこの街に住んでいた彼ならわかっているはずだ。
昔はあんな自己中心的な奴じゃなかったのに。
一体何なのよ。
プロポーズ成功の報告?
それにしてもこんな時間から呼び出さなくてもいいじゃないのよ。
ぶつくさ文句を言いながらも、私の手はファンデーションを顔に乗せていた。
15分後、身支度が整う。
「何時に帰って来るの?」
という母の質問に
「わからないから朝ご飯はいらない」
と答え、自宅を出発。
瑛士の言う30分には15分遅れてしまうことになるが、それで文句を言われたら気が済むまで言い返してやろうと決めた。