意地悪な彼が指輪をくれる理由

「らっしゃいやせぇっ」

バンダナを巻いたお兄さんの威勢の良い声に迎えられ、とりあえず瑛士を探す。

彼はカウンターの端の席で手を振っていた。

どうやら一人のようだ。

そして、その顔を見ると完全に出来上がっている様子。

私は招かれるままに隣の席へと腰を下ろした。

6月に入ったのに、瑛士はまだネクタイを巻いていた。

ジャケットは椅子にかけてある。

「お疲れ、ビールでいいっしょ?」

「あんたねぇ。何なのよ、いきなり呼び出して」

「まあまあ。それはおいおい説明するからさ。まずは飲めって」

瑛士は自分勝手に私のビールを注文し、自分のタイミングで乾杯をして、私にそれを飲ませた。

見るからに酔っぱらっている、瑛士のだらしない顔。

この間再会したばかりで、こんな顔を見るのも初めてで、もうどうして良いやらわからない。

とりあえず、酒に付き合ってほしいらしいが。

「あんた、私と二人で遊んでていいの? 結婚するんでしょ?」

こんな私でも、一応女なんだから。

女と二人で飲んでるなんて彼女に知られちゃったら破局してしまうかもしれない。

そんなリスク、私には重すぎる。

私の心配を、瑛士は豪快に笑い飛ばした。

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