意地悪な彼が指輪をくれる理由
「これ、真奈美に受け取ってほしい」
事の後、瑛士が見覚えのあるケースを差し出してきた。
「はぁ?」
それは間違いなく、ジュエルアリュールのリングケースだ。
一応中身を確認すると、案の定、エンゲージリング「アリュール」が入っている。
「付き合ってもないのにプロポーズ? いくら同級生だからって気が早くない?」
「バカ言うな。一回ヤッた程度で結婚なんかできるか」
「いやーん。瑛士君ったらひどーい。アタシのカラダが目当てだったのねっ」
「目当てにできるほどのカラダか? 自信過剰」
「失礼ね、1億かけたカラダなのよっ」
「……あと何回ボケんの?」
「……この辺でやめときます」
どう反応すれば良いのかわからないからボケたくなったんじゃないの。
こんな高価なもの、簡単に受け取れるわけがないでしょ。
瑛士はそんな私の気持ちを察して笑う。
「遠慮すんなって。もう使い道ないし。俺が付けてたらキモいだろ」
「確かにキモいけど。次にプロポーズする時のために取っとけば?」
「何年後になるかわからないだろ。それに、これは別の女のために準備したものだから。次にプロポーズする時は、その女のためだけに準備するよ」
「カッコイイこと言ったね」
「だろ? 惚れた?」
「……うざっ」