意地悪な彼が指輪をくれる理由
私たち4人は同じ中学の同じテニス部に所属していた同級生だ。
いずみと私、碧と瑛士でダブルスを組み、県大会にまで進んだ仲間である。
高校以降の進路はみんな見事にバラバラだったけれど、私といずみ、そして瑛士と碧は十年来の大親友になった。
そしていずみと碧はこの秋、14年の大恋愛を実らせ結婚する。
中学1年生の時から一度も別れることなく付き合っていたのだから、本当にすごいと思う。
4月に彼氏と別れて1ヶ月の私は、この懐かしい雰囲気に、中学時代の甘酸っぱい恋心を思い出した。
「ねえ、瑛士。秀士(しゅうじ)先輩は元気?」
「……やっぱり兄貴かよ」
「もう結婚した? それとも独身? 彼女はいるの?」
「あーうるせーな! お前、まだ兄貴が好きなのか」
「いいじゃん教えてくれたってー。気になるじゃん」
そう。
私はずっと、瑛士の兄である大川秀士(おおかわ しゅうじ)先輩に片思いをしていた。
純粋で、とても切ない初恋だった。
……つまりその恋が叶うことはなかった。