意地悪な彼が指輪をくれる理由
アリュールのダイヤモンドは読書灯に照らされて妖艶に輝いている。
店で見るのとは少し違う表情。
薄暗いこの部屋で見ても、このリングは美しい。
輝きを堪能していると、ケースがパタリと閉じられてしまった。
「何よ。見てたのに」
「そんなの、職場でも見れるんだろ?」
そのままケースは枕の横に転がされてしまった。
広い部屋に見合わない、狭いシングルベッド。
二人で寝転がっていると必ずどこかしらが触れ合う。
ただでさえ眠りにくいこのベッドで、瑛士は更に体重をかけてきた。
「ちょっと、重いんだけど」
「そうか?」
「そ……んっ」
「真奈美の肌って、触ってると気持ちいいな」
「もうっ、ほんとバカ」
私たちはこの晩、朝方まで互いを抱き合った。
私は瑛士の未練を吸収し、瑛士は私の涙を飲み込んだ。
ただ残念ながら、互いの傷はまだ癒えていない。