意地悪な彼が指輪をくれる理由

マンションの11階。

まだ記憶に新しい瑛士の部屋のチャイムを鳴らすと、10秒後に扉が開いた。

ラフな部屋着姿の瑛士が、笑顔で私を迎え入れる。

「早かったな。ビールあるけど、飲むっしょ?」

私を酔わせてどうするつもり?

なんて言いたくなったけど、酔わなくたって私たちは……。

「飲む」

先日アイスをこぼしたリビングは、変わらずグリーンのカバーがかけられたソファーが存在感を放っている。

アースカラーで統一された室内は女のにおいもしなければ、男臭くもない。

瑛士はリビングに隣接するキッチンの冷蔵庫からビールを取り出して見せた。

「お風呂にする? ビールにする? それとも……お・れ?」

クネクネした滑稽な動きとセリフに、思わず大笑い。

「キモッ。自分でやってて恥ずかしくないの?」

この時にはもう、耀太のモヤモヤなんて頭から消えてなくなっていた。

「別に、真奈美相手だし。で、どうすんの」

「シャワーにする。スッキリしてからビール飲みたい」

「その後は?」

「二次会の打ち合わせでしょ?」

「……チッ。さっさとシャワー浴びてこい。そしてさっさと触らせろ」

「触らせろって、痴漢か!」

私は確かに瑛士に救われている。

そして瑛士を求めている。

瑛士が言う通り、きっとこれがベストなんだと思う。

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