意地悪な彼が指輪をくれる理由
「マリリン・モンローがさ、寝る時に何を着てたか知ってる?」
髪も乾かぬまま放られたベッドの上で、瑛士が尋ねてきた。
「ネグリジェ的なやつ?」
答えると、瑛士は笑いながら私の肩に顔を埋める。
吐息がくすぐったい。
「シャネルの5番だって」
「香水じゃん」
「そう」
「全裸に香水だけ付けて寝てたってこと?」
「そう取れるよな。真奈美見てると、それ思い出した」
そう言って瑛士は、何かを咥えて私の首元に落とした。
身に付けている、ネックレスのチャーム。
合計0.4カラットのダイヤモンドだ。
「私シャネルなんて付けてない」
もし香りがするとしても、瑛士のボディーソープの香りだ。
あるいは瑛士のシャンプーか。
「違うよ。ダイヤモンド。この間も、これ付けてただろ?」
「うん」
「俺の部屋で寝る時、倉田真奈美は何を着る?」
「ダイヤモンド」
「ほら、ちょっとカッコ良くない?」
瑛士は無邪気に笑って、私という獲物を手込めにする。
瑛士の部屋限定なんだから、全然カッコ良くなんかないよ。
エロいだけだよ。
バカみたい。
そう言いたかったけど、私の口は瑛士に塞がれてしまった。