意地悪な彼が指輪をくれる理由
「すっごく綺麗だね。やっぱり真奈美に頼んで正解だった」
「奥様にも喜んでもらえたらいいんだけど」
「きっと喜ぶさ。籍を入れたら、マリッジリングも真奈美にお願いしようかな」
ああ、心が痛い。少しだけ。
「それは奥様が好きなのにしてあげたら?」
「それもそうか」
私のコーヒーが来て、その一杯を飲み干すまでの約10分間。
耀太はずっと妻になるであろうあの女の話をしていた。
女は同じ会社の同期で、入社当初から関係を持っていたのだとか。
そんな話、聞きたくもなかったのに。
浮気がバレて散々泣かせておいて、何の罪悪感もないのだ。
耀太から私のことを尋ねる気配はない。
たぶん興味がないのだろう。
そういう男なのだ。
私は心の底から、かつて愛していたこの男と、その妻になる女の“不幸を”願った。
「じゃあ、これ、指輪の代金ね」
銀行の封筒に入れられた現金を数え、バッグへとしまう。
「お買い上げありがとうございました」
「いえいえ」