意地悪な彼が指輪をくれる理由
瑛士はその封筒を受け取り、中身を見て、驚いたような声を出した。
「これって!」
私は涙を拭い、鼻をすする。
「指輪の代金。カードの引き落とし、まだ間に合うでしょう?」
「真奈美……そんな、良かったのに。そいつに新しいの売れば、店の売り上げにもなったんだろ?」
そうなれば祐子さんはまた飛んで喜んでくれたんだろうけど、私はそうしなかった。
私の気が済まなかったからだ。
瑛士の負担は、少しでも軽くしてあげたかった。
お金が返って来ることで、瑛士の苦しみが少しでも報われたら良い。
「私、思ったの」
「何を?」
「あんなやつら、幸せになんてならなきゃいいって。ひどいでしょ?」
瑛士は再び私を抱きしめた。
でもさっきとは違う、ぎゅっと力強い包容。
私の胸も同じくらいぎゅっと締め付けられる。
「俺もそう思ったよ」
私も両腕で瑛士を抱き締める。
「真奈美、よく頑張ったな」
瑛士はずるい。
普段は口が悪いくせに、こんな時だけすごく優しい。
自分だって辛い時期なのに、すごくすごく優しい。
「真奈美は逞しいよ。頼りになる」
もうダメだ。
苦しくて幸せで張り裂けそう。
私、瑛士が好きなんだ。