意地悪な彼が指輪をくれる理由

周囲に「夫婦漫才」と言わしめるほど口喧嘩が絶えなかった私と瑛士。

あのままもう会うことはないと思っていたのに、なぜこうして12年ぶりに再会したか。

それは、私たちが新郎と新婦の親友として、二次会の幹事を務めることになったからだ。

「新郎側の幹事は瑛士だよ」

いずみにそう聞いた時から、私は再会を楽しみにしていた。

ケンカばかりしていたが、私は瑛士が嫌いだったわけではない。

仲の良かった一人の男友達、かつ人生で始めて告白してくれた思い出深い男が、一体どんな大人になっているのか。

自分勝手に想像しては、早く会いたくて胸を躍らせていた。

中学時代の瑛士は、腕も脚も細くて頼りなかったけれど、テニス部の中では一番テニスが上手だった。

そしてバカな言い合いばかりしていたのに、私なんかじゃ足元にも及ばないくらい成績優秀だった。

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