意地悪な彼が指輪をくれる理由

「4月に別れた元カレが、結婚するとか言い出しまして……」

「ええっ? 早くないですか? 3ヶ月も経たないじゃないですか」

私は耀太と瑛士の指輪のことを一通り語った。

彼女は聞きながら、まるで親友いずみのように、一緒に怒ったり悲しんだりしてくれた。

きっとすごく良い子なんだと思う。

「ごめんね、暗い話しちゃって」

磯山さんはしんみりした顔のまま、首を横に振る。

「大変だったんですね。私なら、辛くて会うことさえ拒否してたと思います」

「うん、私も結構辛かったんだ。自分がやったことは本当に正しかったのか、今でも疑問に思うことがあるし」

耀太が持って行ったあの指輪は、今どうなっているんだろう。

妊娠しているあの女は気に入ってくれただろうか。

「私、倉田さんは間違ってないと思います」

そうだよね。

あの指輪が捨てられてしまうなんてもったいない。

「ありがとう。磯山さんにそう言ってもらえると、気が楽になった気がする」

ああ、持つべきものは友達だな。

磯山さんと話せて良かった。



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