意地悪な彼が指輪をくれる理由

「瑛士がこんな店見つけてくるなんて意外」

「お前に任せてられないからな。焼き鳥屋とかチョイスされたら困る」

「しないし。私だってちゃんと素敵なお店選べるし」

ここはワインも飲めるムーディなイタリアンレストランだ。

会社帰りのデートに使われているのか、クールビズスタイルの男性やブラウスを着ている女性が多い。

瑛士は別れた彼女とこんなお店でデートしていたのだろうか。

ワインで乾杯して上品な料理に舌鼓を打つ彼は、焼き鳥屋での彼とは別人のよう。

ナイフとフォークの使い方も美しい。

それなのに、おじさんだらけの焼き鳥屋に呼び出され、ビールで乾杯し、嫌がらせでつくねばかり10本も食べさせられた私って……。

これが同級生と恋人との格差か。

恋する気持ちは簡単に膨らんでいくのに、現実は容赦なく突き刺さる。

「ねー、瑛士ってどんな女の人が好きなの?」

私の気持ちなんて知らない瑛士は、無邪気に答えた。

「うーん、知的な女かな」

知性のない私に、またもグサリと突き刺さる。

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