意地悪な彼が指輪をくれる理由

ああ、神様仏様。

お金が欲しいとか美人になりたいとか世界が平和になりますようにとか、願いはたくさんあるけれど。

もしも私にチャンスをくださるのなら、この願いを優先的に叶えてください。

「瑛士好みの知的な女になりたいです」

他力本願だけではなく、できるだけの努力はしますから。

もうすぐ七夕だから、Mビルの七夕飾りに短冊を吊るしておこう。



7月8日、朝。

「ねえ、お母さん。知的になるにはどうしたらいいかな?」

私の言葉に、母は思いきり眉をひそめた。

「真奈美あんた、どうしたの急に」

親に向かって、好きな男を射止めたいだなんて恥ずかしくて言えない。

「別に、知的な女に憧れてるだけ」

「知的って、意味わかって言ってんの?」

「さすがにそこまでバカじゃないよ!」

「あらそう。ならいいけど」

母はしばらく考えて、父と弟が愛読している新聞をよこしてきた。

私はほとんど読んだことがない。

「知的とか言う前に、あんたは世間を知りなさい」

そのために、新聞を読めと。

瑛士も読んでるって言ってたな。

タブレットPCに届く電子版、とか何とかで。

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