意地悪な彼が指輪をくれる理由

こういう資格を持っていると、少しは知的に見えるんだろうか。

瑛士には私がバカだってバレているけれど、

「おおっ」

と思わせることくらいはできるだろうか。

だけど資格を取るのって、難しそうだし面倒くさそう。

しょせんは頭がいい人や特別に興味がある人、そして勉強が好きな人のためのもの。

私は勉強なんて大嫌いで、恥ずかしい話、運転免許の筆記試験でさえ一度落ちている。

人気資格ベストテンを見ても、難しそうな名前ばかり。

こんな私が、資格なんて……。

「あ」

ベストテンの中に見つけた、放っておけないキーワード。

「薬」

瑛士はエムなんとかというおくすり屋さんだと言っていた。

確か、医者に薬を紹介する人だと。

つまり瑛士が紹介した薬は、処方箋として出されるということ。

「調剤事務管理士(調剤薬局事務)」

これってもしかしなくても、瑛士の仕事と関係のある資格なのではないか。

「何あんた、資格取りたいの?」

気付くと母が覗いていた。

瑛士への気持ちがバレたみたいで焦る。

「いや、まあ。いつまでもフリーターじゃダメだなとは思ってるけどね」

「比較的難易度は低い、だって。それならあんたでも取れるんじゃない?」

「え、あ……そう、かな」

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