意地悪な彼が指輪をくれる理由
私の失敗で一番苦しい思いをするのは祐子さんなのに、許すどころか笑って励ましてくれるなんて。
嬉しくてありがたくて、感動して涙が止まらない。
でもこれから売り場に戻るのに、お客様に泣き顔なんて見せられない。
早く泣き止まなくちゃ。
心の奥でくすぶっていた重いものがふっと軽くなった。
しかしその分罪悪感は増した。
これをモチベーションに変えなくちゃ。
迷惑をかけてしまった分、この店の、いや、このブランドのために働こう。
「あ、そうそう」
祐子さんが売り場から顔だけこちら(裏)へ出した。
「このこと、あのマネージャーには内緒にしとこうね」
そして再び笑って売り場へと戻る。
私は彼女のもとで働けたことに感謝し、彼女のような器の大きい女になろうと決意した。