意地悪な彼が指輪をくれる理由
いずみはニヤニヤしながらグラスを空け、頬杖をついて私を見る。
「瑛士のこと意識してるんでしょ」
す、鋭い。
「別に、そんなわけでは……」
あるんだけど。
「瑛士って確かMRやってるのよね。そんな業界に微塵も興味がないはずの真奈美が、いきなり資格取るとか言い出すんだもん。瑛士以外に理由がないじゃない」
なんだこいつは。
名探偵か?
図星をつかれた私は何も言えずに唖然としてしまう。
「私も久々に会ったけど、瑛士、なかなかカッコ良くなってたもんねー」
「そう、かな」
そうなんだよね。
昔はモヤシだったのに、見違えてしまった。
彼は「友達」ではなくなってしまっていた。
「男」になってしまっていた。
「まあ、瑛士も傷心中だし? 付け込んで頑張れば色々あるかもね」
かもねっていうか、もう色々やっちゃってはいるんだけど、相手が瑛士なだけに今は言えないし。
思い出してため息をつくと、いずみは私の目をじっと見つめながら尋ねる。
「好きなんだ? 瑛士のこと」
この目に捕らえられると、私は頷かずにはいられない。
「……うん」
私の気持ちはいずみに筒抜けなのだ。