意地悪な彼が指輪をくれる理由

一方でいずみはずっと碧一筋だから、恋愛の相談にはほとんど乗ったことがない。

たまに「ケンカしてムカつく」と聞くくらいで、愚痴を漏らすこともほとんどない。

碧は穏やかで優しいし、浮気なんてしそうにないし、いずみを大事にしている。

悩みや不満なんて、生まれないのだろう。

そして満を持してゴールイン。

恋愛がなかなか長続きしない私は、それがとてもうらやましい。

いずみはニヤニヤ笑顔を浮かべる。

「瑛士と真奈美、私はお似合いだと思うな」

「え? ほんと?」

意外だった。

だっていずみは、今まで私の選んできた男を良しとしたことがほとんどない。

秀士先輩を好きだったときも、耀太と付き合い始めたときも、

「うーん、真奈美には合わないと思う」

と首をひねっていた。

でも、瑛士はいいんだ。

「この間も12年ぶりの夫婦漫才、息ピッタリだったし。何ていうか、珍しくしっくり来た」

「しっくりって……あんまり期待させないでよ。私、片思いなんだし」

「タイミング悪いよねー。中学のときは瑛士が真奈美のこと好きだったのにさ」

考えてみる。

もし中学時代、私も瑛士を好きだったら……。

そしたら、いずみと碧のように、ずっと互いを一途に思い続けてゴールインできただろうか。

……無理無理。

私はいずみのようにサバサバしていないし、瑛士は碧のように穏やかな性格ではない。

幼くて短い恋愛をして別れてしまうのが関の山だ。

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