意地悪な彼が指輪をくれる理由
「瑛士、まだ振られた彼女のこと好きなんだって」
ため息混じりにぼやくと、いずみはそれが何だとばかりに笑った。
「そんなの時間の問題じゃん。傷が癒えたら、また真奈美に目が向くと思うよ」
「そうかなぁ」
「そうだって。それまでしっかり距離を縮めておくんだよ」
「うん」
今は片思いだけれど、この先可能性がないわけじゃないもんね。
私、頑張ろう。
「いずみ、ありがとね」
「なにが?」
「瑛士と再会させてくれて」
「どういたしまして」
いずみと碧が私たちを幹事に選んでくれなかったら、私と瑛士は式まで再会することはなかった。
披露宴の二次会という目標に向かって力を合わせたからこそ、今の距離感がある。
瑛士の温もり、優しい言葉、切ない表情。
それらを感じることができたのは、彼女たちのおかげなのだ。
「そういえばいずみ、いつまでこっちにいるの?」
「あー……えっと、決めてない」
「もうしばらくはいる?」
「うん、そのつもり」
「じゃあ、近いうちにまた飲もうよ」
「うん。そうだね」
こんな私だけど、いつか瑛士が振り向いてくれるといいな。
でもその前に、いずみが幸せに結婚できますように。