意地悪な彼が指輪をくれる理由
「私たち、人生の半分を一緒に過ごしてるんだね」
「ああ。そう考えるとすごいよな」
「でもこれからは、別々に生きていくんだね」
いずみ! そんな悲しいこと言わないの!
言いかけて瑛士に抑えられる。
「……かもな」
碧も!
再び瑛士に抑えられる。
どうして別々に生きていくのを認めるようなこと言うの……?
「全て、いずみが望むようにすればいい。結婚をやめたければやめればいいし、俺と別れたければ出ていっても構わない」
「……そう。構わないんだ」
二人とも意地っ張り。
お互いのことが好きなくせに。
一番大事なくせに。
もどかしくて歯がゆい。
「でも、覚悟しといて」
「覚悟?」
「俺は何度振られても、また一からいずみを口説き直すよ」
碧はネットを越え、いずみの元へ。
「過去2回断られたから、本気の時に断られるのが怖くて、なかなか言えなかったんだけど。俺にはいずみっていう選択肢しかないから、イエスの返事もらえるまで、何度でも言うことに決めた」
ポケットから先ほど祐子さんから受け取ったケースを取り出す。
中にはもちろん、アリュールが収められている。
「西田いずみさん」
少ない照明と月明かりでも、どうか輝いていますように。
「俺と結婚してください」
思い出のテニスコートに、彼の声がふわりと響いた。