好きと言えるまで








教室に着くと他の友達が挨拶を交わしてくる、それに答えながら自分の机へと座ると先程ポケットに入れた手紙を出し裏表と名前を探すも虚しく、やっぱり名前もクラスもなんにも相手の目印となるものがない。


封を開け中の文章へと目を走らせる。


――――つばささんへ
僕はつばささんが好きです。
一度お話しがしたいので今日の放課後
第二資料室に来てくだい。――――


予想はしていたけど文章にも名前は無かった。
それにしても第二資料室は全然人気の無いところ。
告白の穴場という所なのか数回同じような事情でその部屋に行ったことがある。


放課後かぁ、今日は早めに帰るように言われてたんだけどなぁ…


今日は寄り道しないで帰って来てね、と朝学校行く前に義理の親であるあかりが言っていたのだ。

つばさの家はつばさの小さい頃に母親を病気で亡くし、それ以来長女のみさき、次女のつばさ、そして父親である龍一の三人家族でやって来た。

だが父親の子育てというものは何ともだらしがない。

長女のみさきが中学に入学した時だった。
父親の学生時代の時の同窓会で 再開した藤岡 あかり、彼女も子供はいないものの夫を交通事故で亡くしてしまったという。

お互いに似ている部分が多々あり娘のことで相談しているうちにお互い恋愛に発展し再婚した。

それは、母親が居なかった娘たちには嬉しいものですぐに藤岡あかりは、天咲あかりとして馴染んでいった。





もう一度手紙の文章を読み返すと、早く終わるといいな、と願った。








チャイムと、同時に担任が教室のドアを開ける。教室の中に入ってくる先生の後ろにくっつきながら見慣れない顔の男子が入ってきた。
クラスの中の女子が少しざわつく。


「ちょっとイケメンなんだけど!」
「彼女いるのかな」


黒髪で線の細い、キレイな顔立ちの転校生。
ま、私は興味ない。

ぼや、っとその転校生を見ていたらその視線に気づいたらしく目があった。
ふと笑みをこぼされ、笑いかえす。



「はじめまして、一宮 卓真です」



「卓真か、よろしくなぁー」

クラスの男子にも好評みたいで誰かが受け入れる声を上げた。
先生が黒板に彼の名前を書終えると私に目を向ける。

「天咲つばさ、彼に学校案内してやってくれ」

「私ですか!?」

「一宮くん天咲の隣の席でいいかな?」

「あ、はい。ありがとうございます」


彼が私の隣の席へと移動する。
いつの間にかあった空席に担任は元々私に彼を学校案内させるつもりだったんだと確信した。



席に着いた彼ににっこりと笑って見せると、彼も笑顔を返してきた。


回りから、「つばさいいなぁー」「つばさの隣とかうらやましい」とか聞こえたけど無視した。









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