好きと言えるまで
しばらく歩いてやっと人気の無い校舎裏の庭まで来ると彼の方へ振り返った。
「大丈夫?」
「ありがとう、本当助かったよ」
困った笑みを浮かべながらお礼を言う一宮くん。
遠慮したのにも関わらず校内の自販機でジュースを奢ってくれた。
彼は少女漫画に出てくる様なほどクールでもないし。意外と自分に自信は無いのかもしれない。
日陰な場所を探して柴の上へ座る。
彼もそこに腰を下ろすと自分のぶんの缶ジュースを飲みだした。
それをみて自分も一口、また一口と飲みだす。
「それにしても凄い人気者ね」
「自分でもこうなるなんて予想してなかったよ」
あーあ、と教室に帰りたくなさそうにする一宮くんを見るなり少し可哀想に見えこっちも苦笑いになってしまった。
「そのうち落ち着くわよ」
「だといいな、よっ」
私のフォローを受け流しながら彼は缶ジュースを飲み干すと、そこから15メートルくらい離れたゴミ箱へと缶を投げ入れた。
見事にゴミ箱へと姿を消した缶。
「へぇー、なかなかやるじゃない」
「まぁな」
「私もやってみよ」
自分もそこへ入れてみようと、残っていたジュースを飲み干すと。狙いを定めて投げてみる。
――カコンッ