SET
「なぁに、緊張してんのよ!」


スパイクに履き替えて、そわそわしていたわたしはいきなり背中をバシンと叩かれた。


「いった――ちょっと、真心、強すぎだよ……」


叩かれた背中をさすり、半分涙目になりながら真心に抗議した。


「ごめん、ごめん。柄にもなく緊張してるように見えたからさ。ほぐしてやろうかと思って」

「それは、どうも」


痛みのおかげで緊張も吹っ飛んじゃった気がするよ。


「涼風はさ、走るのを楽しんでる時が一番タイムが伸びるから、今日の大会楽しんで走ってきなよ」


真心がにっこりと微笑んだのにつられてわたしも自分の表情が柔らかくなるのが分かった。


「うん……ありがとう、真心」




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