ごめんなさいねぇ
なんでもします
「結婚してくださいよぉ」
交際中の恋人の口から飛び出した最も感動的なはずの言葉に夏子は即答した。

「断る!」

暁生は苦笑したが、さほど傷ついた風でもなく切り返した。

「またぁ、おっかないなぁ。これだけお付き合いしたのに、そんな言い方しなくってもいいじゃない。」

言い方と態度は砕けてはいるが、恐らく暁生は本気でプロポーズしたつもりだったのだろう。

いや、あわよくば簡単にOKの返事がもらえれば面倒臭くない、等と軽く考えての結果に違いない。

これだからΟ型の男は困る。

なにもかもが少しずつ足りないのだ。

「ふざけないで!あたしを何だと思っているの!?」
そう怒鳴り付けて飲みかけのビールジョッキを叩き付けてその場を去りたい衝動にかられたが、
その感情を右の口角に押し込め、
無理矢理不自然な笑顔を作った。

「今のままのあなたと結婚して、私になんの得が有るの?
特に生活がグレードアップするわけでも無い上に、貴方は掃除も洗濯も料理もしないじゃない!
その上私の部屋に都合よく泊まっても家賃の援助を申し出たこともない!
結婚したら私は時間まで奪われると思わない?」

「得?得じゃないと結婚出来ないのかよ!?」
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