ごめんなさいねぇ
暁生の言葉に少し冷気が吹き込んだ。

まいったな・・・

少々言い方を間違えたかなと思いながらも、夏子は会話を続けた。

「あのね、得だけでも結婚出来ないわよ。
当たり前でしょ？
得な結婚だけを狙って生きられる程冷静だったらあなたと付き合うわけないでしょう？
私だって家事は嫌いなの！
知っていると思うけど。
あなたの様に今自分が脱いだものが脱いだ場所に延々と置き去りにされている人と結婚してしまったら、私は嫌いな作業をあなたから無言で強いられる事になるのよ。
そういう生活はごめんだと言っているのよ。」

無理に笑顔を作り一気に説明する為、夏子の目力は結構な迫力だ。

超プライベートの瞬間に仕事の目つきだ。

面倒くさいが必要だから深く考えて一気に解決したいと気合の入った目。

どうして？

どうして、プロポーズの言葉を受けた直後にこのような色気のない緊張感で話をせねばならないのだろうか？

自分で自分が器用なのか不器用なのかわからないが、それでも、なんとか最悪の状態から回避しようと夏子は会話に集中した。

「じゃあなに？俺とは結婚したくないの？」

そら来た！

自分の普段の態度をさて置いて、相手の愛情度をいきなり確認しようとする。

これだから男は面倒くさい。

「暁生と結婚するのが嫌だとは言っていないわ。
嫌いだったら一緒にいるわけないじゃない！？
ただ、あなたの今の性格のままずるずると結婚するのは、恐ろしいと言っているのよ。」

普段は早口の夏子だが、ここはゆっくりと強い口調で説明した。

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