ごめんなさいねぇ
「恐ろしい?結婚が恐ろしいってどういうこと?」

暁生が怒るような驚いたような顔で聞き返す。

「私は今、すごく快適なの。
会社で有る程度の居心地と収入を得られるようになったの。
一人暮らしもなかなか気に入っているわ。
必要なことを必要なだけしてあとはリラックスできる。
やっと・・・やっと手に入れた安心感よ。
それを崩されてしまうようで恐ろしいのよ。」

うまく説明できている自信はなかったが、これは夏子の本心だった。

「え?一人でいるのが安心なの?家族がいるほうが安心でしょう?」

暁生がぽかんとした顔で聞いてくる。

実家だろうが、夏子の家だろうが、家に入ったとたんに自らを締め付ける衣類を脱いだままいつでもリラックスできるお気楽な男にどうやって説明すればいいのだ?

「あなたと私は違うわ」

これまでの暁生との関係を壊してしまいそうな危険な言葉かもしれなかったが、夏子にはこれしか出てこなかった。

どうか、どうか少しでも私の考えを肯定する意味の有る返答が暁生の口から出ますように!

そう、願うしかない。

「はん。」

なんとも拍子抜けな言葉。

「夏子は夏子の家族が嫌いなの?」

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