ごめんなさいねぇ
「俺のワイシャツをクリーニングに出す時間がそんなに惜しいの?」

わかっているのかいないのか?

ついさっきまで暖かい空気のような居心地のいい存在だったと思ったのに、田舎の酔っ払った親戚の伯父さんと話をしている様な嫌な感覚だ!

ああ、メンドウクサイメンドウクサイ!!

大体、こういう自分で自分のことを全くやらないことに疑問を感じない人間はどうやったら作られるのだ?

しかし、このままキレるのは大人ではない。

普段どんぶり勘定な姉御肌を装っている夏子だが、こういうシーンで妙に細かい責任感が膨れ上がる。

自分でも理解しがたい性格だ。

「あのね、まず、『俺の』という考えをやめてくれないかな?」

子供の家庭教師にでもなったような気分でひとつずつ話すことにした。

「『俺の』?はあ?クリーニング屋が嫌いなのか?」

暁生もばかばかしくなっている気がするがここで根負けしたら一生が洗濯女になるような恐怖感で夏子も引けず、

「そう、出来ればクリーニング屋には行きたくないの。
時間もお金も無駄だし、更に言えばアイロンもかけたくないの。
だから、私はアイロンを使わなくて済む洋服しか買わないわ。
それなのに、あなたが好き勝手にしわになりやすい繊細なワイシャツを、
どかどかと脱ぎ散らかされてはたまらないといっているの!」

どうも、しっくり行かないが、これが精一杯。

座って、夕食を楽しんでいるはずなのに、なぜか肩で息をしてる気分だ。
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