もっと傷つけばいい
でも、
「どうするの?」

そう聞いたあたしに、ソウは視線を向けてきた。

「とりあえず、“いない”と言うことにすればいいんだろ?」

ソウが言った。

「いないって…」

訳がわからないと言うように呟いたあたしに、
「今ここにいるのはナギ、君だ。

前の君は、もうこの世に“いない”」

言い聞かせるようにソウは言った。

そうだ。

あたしの名前は“ナギ”こと、“渚”なのだ。

あたしは首を縦に振ってうなずいた。


その翌日、I県のとある山中で白骨化した遺体が見つかった。
< 51 / 140 >

この作品をシェア

pagetop