もっと傷つけばいい
秘密に踏み入る者
『昨日はすまなかったよ。

仕事で嫌なことがあったから、ついあんなことをしてしまった。

そのお詫びと言っちゃおかしいけど、今日は一緒に出かけないか?』

今朝、ソウからそんなメールが届いた。

それで今あたしは、彼との待ちあわせ場所に向かっていた。

その時だった。

「ちょっと君」

声をかけられ、あたしは振り返った。

あたしの目の前に薄汚い格好の中年男がいた。

髪もヒゲも伸びてて、不潔極まりない。

浮浪者か?

「何ですか?」

あたしは嫌そうな顔をしながら男に聞いた。
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