もっと傷つけばいい
そう言えば、ソウはどうしてあたしを“妻”だって言っていたんだろう?

“彼女”や“友人”、もっと言うなら“ただの知り合い”でもいいと言うのに。

「もういいですか?

僕たち、この後行くところがあるんです。

もう用事がないなら失礼します」

ソウはあたしの手を引くと、中年男の横を通り過ぎた。

チラリとソウの顔に視線を向けると、彼は悔しさをにじませた顔をしていた。

悔しい?

どうして悔しがるの?

しつこい中年男をあんなにも上手にあしらっていたと言うのに。
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