イキリョウ

何がきっかけだったんだっけ。多分よくある話で、残業帰りに飲みに行く事が重なって、個人的なことを話しているうちにいつか情が移っていて、多分どちらも計算済みで飲みすぎて・・・。その恋は2年、続いた。白木が大阪に帰るまで、2年。東京のオトコじゃなくて良かった、とその恋が終わった時に思った。そんなことでもなければ加奈子は泥沼にはまって結婚する事もなかったのではないかと思うからだ。

白木が大阪に行って、再び戻った平穏な日々、どうしてこの人に気付かなかったのかと思うような恋に落ちた。加奈子がいた営業部と卓がいたエンジニア部は大きな本社では階が違うし、同じ会社に勤めていると言っても見覚えがあるようなないようなという社員もいっぱいいる。そんな中の一人だといえばそれまでだ。野上卓は2つ年上だったが大学で浪人していたので同期入社だった。社内合コンという訳でもないけれど会社の創業祭の準備で部署をまたいで仕事をしていた同僚とご飯を食べに行く事になったときに同じテーブルの前に居たのが卓だった。


どこの部署なんですか。君は?じゃあ何々君と同じ部署じゃない?何年組み?あなたは?えー、同期なの?知らなかった。

よくある会話を繰り返してどうともなるつもりもなかったのに、縁があるときは縁があるものだ。結婚式を挙げたホテルの控え室で何度も思い出した出会いの場面。
< 4 / 11 >

この作品をシェア

pagetop