【完】ダンデライオン





「この世界と向こうの世界では、食べ物がちょっとだけ違うの。味が同じ食べ物でも、見た目が違うとか……あと採れる作物も違うし。」




そんなことがあるのか…。
似てるようで、ちょっとずつ違ってるんだなぁ……。




「だから、この世界では何が食べられるのか、分からなかったりもした。あとおばあちゃんは料理もろくに出来なかったし。」




おばあちゃんは、小さな声で「結局、今だにおにぎりとそうめんしか作れないんだけど…」と悔しそうに言っている。



……ちょっと待って??




「おばあちゃん…もしかして、昨日ガンガンそうめんを作ってくれたのって…!?」



まさか、おにぎりとそうめんしか作れないから!!??




「うん、そうなの。魔法で料理は出来るから良いんだけど、たんぽぽちゃんの前では魔法は使えないから……」




そういうことか……。



でも、それならお昼はそうめんで、夕ご飯はおにぎりとか……せめて変えてほしかった。


二食ともそうめんは辛かったよ…




……っていうか、おばあちゃんって、炭水化物の一品ものだけしか作れないんだ…。



普段料理はママに任せきっきりの私でさえ、カレーとかシチューとかなら作れるのに。


私よりも料理のバリエーションがないんだろうなぁ…。



食材がいまいち分からない…とか以前にセンスの問題なんじゃ………。



いや、これは気付かなかったことにしておこう。うん。





私が考え込んでいる間、黙ってしまったのを心配しておばあちゃんが声をかける。




「どうしたの?たんぽぽちゃん」



「ううん、何でもない。」




もう一口、おにぎりをかじる。
まぁ、おばあちゃんの料理センスに関わらず、おにぎりはとてもおいしい。



おにぎりを頬張る私に、おばあちゃんは話しかけた。



「ねぇ、おいしい?」



「うん!」




「それは良かった。」





おばあちゃんは、とても嬉しそうだった。





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