【完】ダンデライオン
「この家に住むようになった日から…この部屋の魔法陣の力で、たんぽぽちゃんが行った雪の国へ行けるようにしていたの。」
…なるほど。
雪の国に行けるようになっているのは魔法陣の力。
どことも繋がってない壁にあるドアは、実はただの形式的なものだったってことかな…
「私は、雪の国を出てからはほとんど戻らなかった。…息子にも、合わせる顔がなくてね。」
おばあちゃんは、すごく言いにくそうだったけど、正直に話すことを決めたみたいだった。
いくら正直に、とは言っても、自分自身が悪かったと思っていることを他人に話せるおばあちゃんはすごい…と思う。
「私は、エルノという孫が生まれたことを知らなかった。…知ったキッカケは、忘れちゃったんだけど。」
おばあちゃんは、また一口紅茶をすすった。
つられて、私も紅茶を一口。
喉の渇きがなくなり、初めて喉の渇きを自覚した。
「それと、私の息子である国王が…永遠の命を持つように、春がこないように、時を止める魔法をかけたことも、後から知ったの。」
「えっ……」
私のつばを飲み込む、ゴク、という音が部屋に響いた。
ちょっと気になったけど、それどころじゃない。
「そのことを私が知った頃には、息子は…すでに亡くなっていた。」