【完】ダンデライオン







マグノアは、私に何も言わずに歩き出した。


方向から言って、私が出てきたおばあちゃん家のドアに向かって歩いているみたい。




『あの人とも、話した方が良い。ひとまず、これから…私が知っていることを全て伝えよう。』




「う、うん。」




『私は、生まれてからの3年間。あの雪の国の中で過ごしていた……』





---まだ時間は流れ、春が訪れていた50年前。


マグノアをはじめ、昔は雪の国の中で、ニンゲンとオオカミは共存して生きていたらしい。



国王…エルノのお父さんは、ニンゲンも、オオカミも、植物もとても大切にしていた。


命あるもの全てを、分け隔てなく愛したという。



いつ、どんな時も慈しみの心を忘れない国王を、国民は愛していた。



その頃、マグノアは雪の国の城内で飼われていたらしい。




それは、突然の出来事だった。



この世界に、生き物に流れる時を止める魔法をかけた者がいた。


それは、国王だった。




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