【完】ダンデライオン
どれくらい歩いたか、もう分からない。
雪が降り続け、とても静か。
私とマグノアの歩く、小さな足音だけがかすかに聞こえる。
「森の中って…いつもこんな感じ?」
『…あぁ。そうだな。』
「静かで…私の声が届かないような気がする。……なんか、寂しいね。」
ふ…、とマグノアが笑ったような気がする。
『そんなことはない…私には、愛する仲間がいる。』
「………優しいんだね。」
『そう見えるか?』
自分のことだから、分からないの?
マグノアは、とても優しいよ。
そう思ったのに何故か、言葉に出来なくて。
また無言のまま、私たちは歩いた。
針葉樹林が見える限りに沢山、並んでいる。もと来た場所も、もう見えない。
『…そろそろ、あの人のもとに着くな。』
「……えっ?この辺だったっけ?」
『お前、記憶力もないんだな。残念な限りだ。』
「ちょっと待って!こんな目印のないようなとこで、記憶力とか言う!?」
私の反論に、マグノアはフッと笑う。
私も、おかしくなって笑う。
この世界に、悪い人なんていない。いい人ばかりだった。
それなのに…どうしてこんな……。
どうして、寂しいんだろう…。