【完】ダンデライオン
『……ここだな。』
そう言って、マグノアは何もないところで突然立ち止まった。
「……ココ?」
『あぁ。ここから、あの人のところに戻れる。』
……とは言っても、私がこの世界に入ってきた時のようなドアみたいなものは見当たらない。
戻れる……?
「ど、どうやって…?」
『ん?目の前に、ドアがあるだろ?開ければ良いだろ』
マグノアは当然のようにドアがあると言い出した。
……そんなもの、ないけど。
「………?」
『あー……そうか。これが魔法で、お前は見えないということか…。』
マグノアは、一人で納得していた。
どうやら、おばあちゃんの魔法にのよって、この世界に住む者にしかドアは見えないらしい。
私には、残念ながら何も見えないけれど。
マグノアたちには、どんな形のドアが見えているんだろう…。
『とりあえず、私がノックしてみるから。あの人から開けてもらおう。』
そう言って、マグノアは前足を起こし、後ろ足の二本で立ち上がるようにした。
そして、前足で空中を叩いていた。
特に音もしないけど、途中で固いものに当たったかのように前足の動きが止まる瞬間がある。
「……ねぇ、ノック…出来てるの…?」
『当たり前だろう…!私が…!こんなに…!頑張っているのに…!!』
なんかマグノアは息切れしてる。
二本足で立ってのノックはきつかったらしい。
……ごめんね。
言わないけど。
マグノアが、必死にノックしてくれたにも関わらず。
おばあちゃんがドアを開けてくれることはなかった。
「ドア、開かないね。」