夢への道は恋の花道?
私の就職先
幼稚園から大学まで平凡に生きてきた私、日高ミチルはこれから先も平凡な人生をたどるはずだったのです。

普通の庶民の家に生まれ、父母と妹の4人家族として普通に生活してきました。

幼稚園からとくに目立ってかわいかったとか、優れているとか、いじめられたということもなく、今にして思えば世渡り上手な生き方をしてきたのかなぁ・・・とも思うくらいです。



そして、大学もどっちかといえば3流大学ですが、両親の愛情こもったお金と自分のバイト料でなんとか学費を払い、いよいよ卒業を目前にしております。


卒業後は大学に残り、助手として服飾、繊維関係の研究をしてから先生になるかそちらの方面の就職をしたいとワクワクした希望を抱えていたのが昨日です。

そう、昨日までは・・・なのです。



そして、運命の今日がやってきました。


早朝から両親の様子がおかしいので、事情をきいてみると父親が経営する機械工場が国内の大企業の買収に遭ってしまい、労働者として残るか退職するかをせまられているというのです。

労働者として残ったとしても、ずっと職人気質な父や古い職人たちには新しい環境でやっていくのが難しいだろうと考えられるし、父はとりあえずお金を受け取って工場を手放すしかないと考えてしまっていました。


「そんな簡単にあきらめちゃっていいの?」


「仕方がないだろ!俺たちにはとても用意できない金が必要だし、たとえ少し融資してもらえたとしても相手が大企業じゃ、ぜんぜん太刀打ちできん!

まずは長きにわたってがんばってくれた従業員のためにお金を用立てることしかワシにはできないんだ。」



大企業側に返事をするまであと5日。
いい手だても見つからないまま・・・残り2日。



そんな重い家庭の空気の中で妹の日高ミナトは能天気丸出しとも思える笑顔で

「ねぇ、お金がどっさりあったり、土地とか工場とか会社とかあったら何にも困らないんだよねぇ。」


と突拍子もない発言をしたのです。


「ミナト、あんたとうとう頭がどうかしちゃったの?かわいそうに・・・」


「どうかしちゃってるのはお姉ちゃんだってば!ほらこれ見てよ。
この雑誌ね、よくモデルのオーディションとか募集してる女の子のための人気雑誌なの。

そのくらい流行に疎いお姉ちゃんでも知ってるよね。」



「えっ・・・あ、mirumiruって大手の出版社で有名な本じゃないの。
そのくらい私でもわかるわ。

え~~~なになに?
『常春の楽園のプリンスに求婚してみませんか?』

『お妃候補になって半年間がんばったあなたには、たとえお妃になれなかったとしても王国からお礼として最高日本円で3億円程度まで援助いたします。
ただし、現金払いについては1千万以内といたします。』

現金は1千万までしかくれないんだわ。ってことは3億って何か経費的なことならいいってことかしら?」


「あ、そうそう。工場を建てて実業家をするならバックアップしてくれるんだって。さっき問い合わせてみたら担当の人がそう説明してくれたわ。」


「ちょ、ちょっと待ってよ。ミナト・・・あんた勝手にそんなこと。
私はまだ何もやるって言ってないわよ。

それに、これって条件が書いてあるじゃないの。

『年齢20才以上30才以下の健康な処女であること。
国籍や宗教はとくに問いませんが、テラスティン王国の国益の妨げや損害をかける要素がある方については候補になれないものとしてご了承いただきます。』だってさ。」



「お姉ちゃんよかったわね。ばっちり合格じゃん!」


「何いってんのよ!100歩譲って、私がそれで応募したと仮定してもよ。
ここから書類審査があって、受付で面接があるって下の方に書いてあるわ。
面接に行くのだって、そんなわけのわかんない国までの旅費がいるのに無理よ。」


「そうでもないみたいよ・・・。執事が家庭訪問に来るって書いてあるもの。
こういうってうまく面接にパスしたら自家用ヘリとかで現地まで連れていってくれるんじゃないの?
もう、ほんとにシンデレラストーリーなイベントだわ!」


「いいかげんにしてよ。そんなあんたの思いつきなんかねぇーーー!あれ?」


ミチルがふと振り返ると、両親2人でミチルの方に手を合わせていた。


「うそ・・・親がそういうのにマジ乗っかるつもりなの!
しんじらんなぁーーーーーい!!!!」

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