夢への道は恋の花道?
3回ほど、コンコンとドアをたたくことを繰り返していた男だったが、それから程なく声をあげた。


「ここにエレンをかくまっているんだろう?
こんなドアなど、すぐにはがせるんだぞ。
道具はすべて用意してきているんだからな。」


「もう警備に電話したわ。
ドアをはがしているうちに撃ち殺されたくなかったら、出て行きなさい!」


「そんなもん、怖くはないね。
この建物のあちこちに、爆弾をセットしておいたからな。

お姫様たちやメイドさんたちみ~~んな人質ってことだな。
だから警察はやって来れねぇよ。あはははは」



「そんなウソ!」


「ウソじゃねえ!窓の外を見てみなよ。包囲はしてても見てるだけだろう?
さっき取引したんだよ。

エレンを差し出せば、俺たちはエレンといっしょにこの国を出て行くってな。
金も用意してくれてるようだぜ。」



「なんですって!そ、そんな・・・この国の警察ってそんなに薄情なの?
お妃候補を呼びつけて守ってもくれないの?」


「いろんな国があるんだよなぁ~。
おまえは平和な国からやってきてるんだろう?

こんなめんどくさいことに関わって王子と結婚できないばかりか、痛い目にあったら絶対損だよな。運がなさすぎるよな。

悪いことは言わない。エレンを出せ。
出してすぐに鍵をかけて、かまわないぜ。」


「お願い!ミチル。私なんでもあなたの言うことをきく。
だから、だから、追い出さないで。助けて!」


「エレン、大丈夫、私はあなたを追い出すなんてできないわ。」


「へぇ、じゃ、試しに爆弾を1つ、爆発させてみようかな。
最上階のヤツらにまず死んでもらったら、おまえら信じるだろうしな。」



(困ったわ。そんなことされたら・・・こうなったら・・・)


ミチルは自分の荷物を開けると中からゴキブリ用の殺虫剤と、納豆と沸きたてのお湯を鍋に移して、鍋をエレンに構えさせた。


「エレン、私がドアを開けたら目に殺虫剤を吹きかけるから、鍋のお湯を男の体にぶっかけるのよ。」


「うん、わかったわ。とにかく動けなくするのね。」


「ええ、そうしなきゃ、みんな助からないもの。
悪いヤツは死なない程度にやっつけましょう!

じゃ、いくわよ、3.2.1GO!」


バタン!

部屋のドアを開けるとミチルはすぐに男の目に殺虫剤を吹き付けた。

「おわっ・・・!な、目が・・・くそっ」


「今よ、エレン。」


「ワァーーーー!」


バシャッ!!と熱湯は男のボディにかかり男は床を転がりまくった。

それでも目を開けようとしたので、ミチルは納豆を男の目にぐっと塗りこんで顔中納豆をなすりつけた。


「ぐえ~~~おえ~~~やめろ!おえ~~~!」


「すぐ外に出ましょう。」

ミチルとエレンは裸足のままオジュロールのエントランスまで走って行った。


しかし、主犯格のストーカーと真正面から遭遇してしまった。


「ここまで来たのに・・・!どうしたら・・・」


「生憎だったな。俺の用心棒をやっつけたまでは大したもんだが、もう終わりだぜ。

俺は爆弾のスイッチを持っているんだからな。」


「うう、口惜しいわ。」


「ふふふ。口惜しいか、いいねぇ。若い女が悔しがりながら、ここで俺たちになぶりものにされるなんて、気持ちがよさそうだな。ひひひ。」


「変態!」


「威勢のいい女、まずはお前をここで裸にひんむいてストリップショーってのもいいよな。」


犯人はエレンの顔をなぐって突き飛ばすと、ミチルの腕をつかみ床に押し倒してお腹の上にまたがった。


「いやあーーー!」

さすがにミチルも押し倒されて上に乗られてしまうと、体の自由がきかなかった。
腕も後ろにまわされて手も使えない。


「気絶させてからやってもいいんだが、それじゃつまらないからな。
このままひんむかせてもらう。」


ビリッ!ビッ・・・とミチルのTシャツが破かれ、上はブラジャーだけになっていき、男がブラジャーに手をかけようとしたとき、ミチルは咄嗟に唾を男に吐きかけた。


「うっ、こ、なんてやつだ!」

ほんの一瞬、犯人が目をこすったとき、複数の銃声が響き渡り、男の頭から血が飛び散った。


「あ、ああ。・・・あっ・・・」

ミチルは助かったと思うよりも先に、男の頭が吹っ飛ぶ光景を目の当たりにして気を失ってしまった。


オジュロールに警察官が続々と入っていき、犯人は逮捕、爆弾はすべて回収撤去された。


ミチルは遠くでエレンの声を聞いた。


「ミチル!ありがと。この恩を忘れないわ。
ミチル、ありがと。ありがと。誰か、ミチルを助けてあげて~」
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