夢への道は恋の花道?
ミチルが目を覚ますと、見たことのない部屋のベッドの上だった。


「あれ?ここはどこ・・・?なんかすごくゴージャスな感じがする。」


「急に起き上がってはいけません!」


「か、柏木さん・・・あれ、私はたしかエレンと・・・。
あっ・・・ああ・・・きゃあーーーー!」


ミチルは頭を手で押さえて叫んだ。
ストーカー男の頭から血が吹き出し、飛び散る映像がよみがえってきた。


柏木はすぐにミチルを抱きしめると頭をさすった。


「あの男は死んでいませんよ。頭は出血が多いのです。
そのくらいの知識はありますよね。」


「だ、大丈夫だったの?」


「はい。射撃のプロばかりでしたからね。」


「ウソです。
射撃のプロなのは本当でしょうけど、本当は犯人は即死だったんでしょう?」


「集合時間は無視するほどいい加減な認識をしているくせに、記憶から消したいはずのこんなことを・・・するどく指摘しますね。

私の気遣いを打ち砕いていただかなくてもいいのに。」


「こういうのはずっとフラッシュバックとかしちゃうのかな。」


「わかりません。まだあなたがストーカーにずっと付きまとわれていたのではないのが救いでしょうけど・・・。

あ、エレンさんがお礼の言葉を伝えてほしいって言ってました。」


「エレンは大丈夫だったのね。」


「ええ、頬と口に少し出血がありましたが、他には何もありませんでした。
それより・・・。

包囲されているあの状況の中でエントランス前にはテレビカメラもあってモニターでも見られているあの状況で、犯人に服を破られていくあなたを見て私がどんなにショックだったか・・・。」


「心配してくれたの?」


「あたりまえです!ドアを開けてほしくなかった。
私はエレンさんを保護してほしくなかった・・・。

でも、状況がそれを許さなかったのでしょう?
だから・・・怒りで頭を撃ち抜きました。」


「ええーーーーっ!柏木さんが撃ったの?ウソッ!!!」


「あなたの唾で目をこすったあの時に仕掛けなければ、きっと後悔すると思ったから・・・。
人を撃ったのは久しぶりです。
まだ、手が震えています・・・。」


「柏木さんまでしっかり巻き込んじゃってたんだね。ごめんなさい。

あ、エレンの執事さんは?キアフさんだっけ?」


「打撲と腕の骨折だけでしたので、命に別状はありません。
彼はもともと執事だったので、戦いには不慣れでしたし・・・。」


「じゃ、柏木さんは戦い慣れてるってこと?」


「えっ・・・まぁ。軍隊と警察での経験もありますから。」


「す、すごお~~~い!私ってほんとに担当執事でラッキーしてるんだね。
やったぁ!あはは。」


「冗談じゃありません!こんな身の危険はあってはならないのに・・・。
この国で、こんな汚らわしい記憶を持って帰ってほしくありません。」


「柏木さん・・・。ありがとうございました。
いちばん最初にお礼を言わなきゃいけないのに・・・。
また、私・・・ご迷惑をかけて。」


「キョウと呼んではくれないんですか?
お礼やお詫びより、そちらを守ってほしいですね。」


「だって・・・。柏木さんはずっと上のお兄さんみたいで、呼びにくいんだもん。
せめてイディアム王子くらいだったらねぇ・・・。」


「イディアム王子と1つしか違いません。
学年1つ先輩なだけです。」


「う・・・そ・・・!!!あ、ははっは・・・はは。
あれえ~~ここってどこのベッドなのかしらぁ~~?」


「ここはイディアム王子の弟のギリアム王子の邸のゲストルームです。
ギリアム王子の奥様のメラルーナ様がこちらを使用するように取り計らってくださったんです。」


「お会いしたこともないのになぜ?」


「妊娠中で昨日は欠席されておられましたが、あなたは話のタネになっているようで、メラルーナ様は興味がおありだったことと、この事件でしばらくオジュロールは使えないことになり、お妃候補は王宮近くの貴族邸に分かれて住んでいただくことになりました。

ここはメラルーナ様からの申し出と、じつは私の住まいの隣だからという理由です。」


「キョウの家が見えるの?探検にいっていい?」


「ダメです!セキュリティはありますが、女性禁止です。」


「どうして?それじゃ、お母さんも妹も入れないじゃない!」


「そんな人はいません。私の家族は子どもの頃に亡くなって、教会の子どもでしたから。」


「ごめんなさい。余計なことをききました。
だけど・・・女子禁制なんて、うそでしょ?

女性ばかりはべらせてることで有名だし、オバサマたちはみんなキョウを涎たらして見てるように思うんだけど・・・。」


「なっ、わ、私をなんだと思っておられるんですか!
任務中は女性を寄せ付けないことにしているだけです。

お妃が決定したら・・・」


「どんどん遊ぶのね。」
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